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2007年05月21日

槍ヶ岳からの下山で・・・

嵐のような風の音で目が覚める。
4時。あたりは真っ暗。

5時に再び目を覚ましたときには・・・

真っ白だった。


yari20070513-003.JPG


いよいよ吹雪の中の下山開始だ。


6時に小屋の朝食。
ごはんと温かい味噌汁。
海苔とじゃこおろしに、焼鮭。


yari20070513-001.JPG


いつもテントで前夜の鍋の残りにラーメンを入れている身には、
贅沢すぎる朝ごはん。

吹雪の中で補給もできないことを想定し、
めし2杯、味噌汁2杯に、たっぷりとお茶を飲んで
しっかり水分補給。

小屋の前で出発の準備をしながら、
少しでも風がやんでくれないかと思っていたが、
一向に風はやむ気配がなく、手が寒さで痺れてきたので
ついに下山開始である。


yari20070513-002.JPG



私の前に、6人ほどのパーティ。
そして単独行のおじさん。
この方は新穂高方面へ下る予定だったそうだが、
強風をモロに受けるので、槍沢〜上高地へと転進。


稜線を槍の穂のほうへ数十メートル行き、
槍沢の急斜面の下り口へ。

すでに視界がほとんどなく、下り口がわかりづらい。
先行した2パーティもすでに見えない。

急斜面を慎重に下り始めると、稜線から吹き降ろしてくる強風が
凄まじく、前に向かって吹き倒されそうになる。
ピッケルを雪面にしっかり刺し、アイゼンをきかせて下降する。


しばらくすると前方に、うっすらと見える2パーティを発見。



yari20070513-003.JPG


先頭だった6人パーティが止まったため、
単独行のおじさんと私が横を追い越して下る。

追い越して20mほど下ったときに事件は起きた。



後で大きな悲鳴が聞こえて振り返ると、
赤い物体が物凄いスピードで落ちてくる。


滑落だっ!


とっさに右手のピッケルを思いきり雪面に刺して自分を確保し、
左手で滑り落ちてきた女性をつかもうとしたが
間一髪左手は空を切り、女性はすり抜けていった。


ああっ!!!!!!!


もう少し行けば緩斜面のはずだが・・・



次の瞬間、下方でおじさんの声がした。

「大丈夫だー」

地吹雪に消えそうなその声を受継いで
上にいるパーティに「大丈夫だー」と怒鳴り、
急いで斜面を降りていった。


この間ほんの数秒だったに違いない。
しかし、自分でも不思議だったのだが
その瞬間、スローモーションのように、落ちてくる女性の恐怖の顔、
ザックのディテールまでが鮮やかに見えたのだ。

そして自分の動作がもどかしいほど遅く感じられた。


20mほど下ったところで、その女性が座り込んでおり、
横に単独行のおじさんがいた。

自力で止まったのか、おじさんが止めてくれたのかわからなかったが、
とにかく怪我もなく無事だった。

よかったよかった。

ほっと一息ついて、しばらくそこでおじさんと女性と話しをしているうちに
上から同行者も追いついてきたので、
お気をつけてと挨拶し、ゆっくりと出発。

滑落するとあんなスピードで落ちていく・・・ということを
まざまざと見せられ、あらためて緊張しながら再び下降を開始する。

地吹雪はやむことなく、強風も間断なく襲ってくる。
雪面にささっている目印のワンド(赤い旗をつけた竹ざお)も
10〜20mおきくらいにはあるはずなのだが、
ワンドのそばに立っていても次のワンドが見えない。

方向を確かめつつ、じりじりと次のワンドを見つけながら
くだっていたが、前をいっていたおじさんが右の谷のほうへ
迷い込みそうになっているのを発見し、
声を掛けて左のワンドへ誘導する。

ほんのちょっとしたことが事故につながりそうな荒天。

槍沢上部の強風帯を通過し、槍沢の下部に。
風が弱まり、ずいぶんラクになった。

やがて昨日のぼってきたデブリ帯にさしかかる。
振り返ると槍沢上部は真っ白で、
依然として厳しい状態のようだった。


yari20070513-004.JPG


尻セードでもして快適に下りたいところだったが、
視界も悪いし、さっきの事件の後だけに、さすがに決行できず、
静かに槍沢を下り、ババ平を過ぎて槍沢ロッジに。

ここでほっと息をつき、アイゼンとピッケルの装備を解除。
ストックにもちかえて、槍沢沿いの道を横尾へと歩き出す。

ここからはBGMつき。
昨夜胸に飛び込んできた鈴木重子をしっとりと聴きながら。


一ノ俣付近から小雨が降り出してきた。
上高地を目指して急ぐ。

いつしかBGMがかわっていた。


あれっ?

重々しい前奏とともに、重々しいリズム。
ホーンと大太鼓の2拍子 ♪!〜♪!



「銭形マーチ」である(笑)


会社に向かう朝、気分の乗らないときに
階段を登りながら気合をいれるときのBGMなのだ。

ひとりで苦笑しながら、マーチに乗って
すごい勢いで徳沢を通過。


上高地にはいり、河童橋から穂高を振り返る。
上部はまだガスで見えなかった。



yari20070513-005.JPG


次にくるのは夏山か、錦秋の山か。
それともまた雪の季節になるのか。

残雪期の槍ヶ岳。
課題は残しつつも、憧れだった槍沢を一日でツメての山行は
心に残るものであった。


■初日の登りの様子
残雪の槍ヶ岳へ!(憧れの3000m雪の稜線へ)

■初日のビールタイム
槍ヶ岳山荘3000mのビールタイム

■槍ヶ岳山荘の夕食の様子
槍ヶ岳山荘の夕食


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posted by げんさん at 12:43 | 東京 ☀ | Comment(8) | TrackBack(0) | 北アルプス 冬山 春山 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ヒヤヒヤしました、ドキドキしました。
皆さん無事で本当に良かった!ほんとに。

Posted by heppoco at 2007年05月21日 22:28
>heppocoさん
おはようございます。
コメントありがとうございます!

ホント、瞬間真っ青になりましたが、
「大丈夫だー」の声をきいて
ほっとしました。
こんなとこで書ける程度ですんで
よかったです。
Posted by げんさん at 2007年05月22日 05:10
!!!!!!!!!!!
みなさん、ご無事でなによりでした。ほっ。

一昨日昨日と、所用で谷川岳を望むエリアにおりました。
一昨日はみぞれ、昨日は雲ひとつない晴天。
里から眺めていても山の天気はくるくる変わるものだと
ため息をついていました。

ほんとにほんとに、ご無事のお戻りなによりです♪
Posted by サハラ at 2007年05月22日 05:12
>サハラさん
コメントありがとうございます!

かなりキンチョーが走りましたが、
無事戻ってまいりました。

谷川岳ですかっ!
一度登らねばと思っている山です。
厳冬期は厳しそうなので、秋くらいには
偵察に行こうかなんて思ってます。

Posted by げんさん at 2007年05月22日 08:00
げんさん、こんにちは。
ホントに・・・良かったですね。
げんさんが書いているんだから大丈夫だったんだ、と解っていても読んでいてドキドキしました。視界不良な吹雪の画像を見るだけで緊張しました。
交通事故でもその瞬間はスローモーションのようだ、と聞きますがホントにそうなんですね・・・
ご無事で何よりでした。
Posted by cyu2 at 2007年05月22日 12:48
>cyu2さん
こんばんは。
コメントありがとうございます!

私も書きながら思い出してドキドキしました(笑)

そういえば以前営業中に路上でバイクにはねられたときもスローモションだったのを思い出しました。。。
Posted by げんさん at 2007年05月23日 00:55
はーっっっ、大事件ですねっっ(><)
こんなこと書いていいのかどうか微妙ですが、
げんさん、まきこまれなくてよかったですね(><)

落ちてきた人にぶつかったら…
げんさんもその方も無事じゃなかったかもですもんね(ノ_・。)
Posted by あじこ at 2007年05月24日 22:47
>あじこさん
こんばんは。
コメントありがとうございます!

左手が届いていても、止められるかどうか
自信はなかったのですが、とっさのことで。。。

ともかく誰も怪我なしでよかったです
Posted by げんさん at 2007年05月24日 23:57
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