TOP 北アルプス 夏山 秋山 >栂海新道(栂海山荘〜親不知)

2012年08月22日

栂海新道(栂海山荘〜親不知)

いよいよ縦走最終日。

20120805tugami3-010.jpg

栂海山荘から栂海新道を日本海の親不知の海抜0m.まで歩ききる
憧れの縦走路踏破のときがきた。

前日の酷暑の栂海新道の状況から見て、
ここから海抜0m.まで、カンカン照りの縦走路をコースタイムで
8時間以上歩くことを考えると、日の出前にできるだけかせいで、
午前中の早いうちに親不知にゴールしないと大変なことになりそうだ、
ということで、2:30に起床。

水分とともに失われがちな塩分もしっかり摂っておかないと・・・
テントの中で紅茶とパンをかじり、食後に梅昆布茶も飲んで準備万端。

3:40 テント撤収と準備運動を終え、ヘッドライトを頼りに
栂海山荘を後にする。

最初はどこまで下るのか・・と不安になるほどの急なくだり。
ヘッドランプに群がる虫を払いつつ、ひたすら下る下る下る。

5:00 菊石山到着。

20120805tugami3-002.jpg

ようやくあたりが明るくなり、

20120805tugami3-004.jpg

稜線をさらに進むと、陽が昇ってきた。

20120805tugami3-005.jpg

前方に立ちはだかる、下駒ケ岳の急登。

20120805tugami3-006.jpg

ロープや岩につかまりつつ、崖の右手にあるルートをよじ登る
ここですでに汗だくになりながら、下駒ケ岳山頂到着。

20120805tugami3-007.jpg

まだ白鳥山は遠く、頂上にある白鳥小屋はとても小さく見える。
そして急な登りの縦走路にちょっと心が折れそうなくらい、時間がかかりそうだ。。。
1,200m.あまりの山がこんなに大きく見えたことはない。

ほとんど苦行のような勢いで、下駒ケ岳から一旦かなり下り、
白鳥山の登りにかかる。

まだ6時台だというのに、額から汗がしたたり、
首にかけた手ぬぐいはびっしょり。

ここが今日の最大の登りであり、正念場だ。

・・・と突然、前方に青空が見える。
まさか、いや、まさか・・・
いや、そんなはずはない。

こんなに早く白鳥山に着くなんて、
きっと、きっとニセピークだ。
信じちゃダメだ。

ここで心が折れたら立ち直れないよ・・・

でも、建物が見えるような・・・

20120805tugami3-008.jpg

おおっ!
白鳥小屋だ!!!

20120805tugami3-009.jpg

6:40 白鳥山到着。

これで今日のヤマは越えた。
しかもまだ7時になっていないし。

白鳥小屋(無人)の屋上に梯子であがり、
今朝出発してきた犬ヶ岳と栂海山荘のほうを振り返る。

20120805tugami3-011.jpg

いやぁ、遠い・・・
これ、昨日の炎天下に白鳥小屋まで行こうとしてたら、
きっと心が折れていたに違いない。

目指す日本海は・・・

20120805tugami3-010.jpg

いまいちどの尾根のどの山をたどってゴールするのか、
ここからでは定かではないが、しかし、先は見えた。

十分に水を飲み、エネルギー系ゼリーでチャージ完了。
7:05 白鳥小屋を出発。

ちょうどこの小屋で、栂海山荘組は、男性単独3人、女性二人組みが
一緒になり、相前後して日本海を目指し下り始める。

白鳥山からしばらくは緩やかな下り。
さて、炎天下にならないうちにここで稼ぐぞ・・・と
フルスピードモードで心も軽く、一路日本海へ。

1時間ほどして、シキ割の水場。

20120805tugami3-012.jpg

水は細いが、黄蓮の水場のようなぬるい水ではなく
冷たい水がとても心地いい。

さあ、この最後の水場を後に、あとは日本海へまっしぐら。
坂田峠への急な下りの下降を始める。

だが、異変はこの後襲ってきた。


ここまで暑いながらも快調に飛ばしてきたのだが、
下りなのに、尋常ではない大量の汗をかいていたのが
そもそもおかしかった。

下りの途中で、突然、ウエストポーチの中まで浸水するくらい
額から信じられない量の汗がボタボタボタ・・・と落ち、
急に目の前が暗くなってきた。

まずい・・・

急な下りのさなか、少し平になったところまで
なんとかバランスを崩さずに降りたとたん、
そこにザックから倒れこむ。

手が痺れてザックから抜け出すこともできない。

こ、これが熱中症?

汗が噴出し、めまいと手の痺れで動けない・・

数分間そのままじっと動かず、ようやく手の痺れが軽くなってきたので、
ザックをはずし、地図でとにかく顔を扇ぐ。

水を少し飲み、たくあんの小袋としょうがを齧ったら
ようやく落ち着いてきた。

いや、まだゴールまで4時間近くあるというのに
このありさまでは、いったいどーなるのだ。。。

15分ほどしてなんとか動けるようになり、
ゆっくりゆっくり、めまいをおこさないように木やロープにつかまりつつ
一歩一歩と下降。

9:00 坂田峠到着。

20120805tugami3-013.jpg

林道を横切ったところの森の中に、旧街道の峠があり
日陰で海側から涼風が通っていた。

とりあえずザックをおろし、座り込む。

ここで思案のしどころだ。
万が一ここから4時間歩けないようなことなら、
坂田峠まで車を呼ぶしかエスケープルートはない。

最後のフリーズドライおにぎりとたくあんをつめこんで
エネルギー補給と塩分補給をしつつ、水を飲む。

20分ほどゆっくり風に吹かれていたら、なんとけいけそうな感じになってきた。
とてもスピードはだせないが、だましだましいけば・・・

カメのようにのろのろと、ときおり激しい日差し受けながら
尻高山ののぼりにかかる。

幸い、だらだらとした山道で、いまのコンディションにはありがたい。

相変わらず樹林の中には風がなく、地面と上から
酷暑が襲いかかるが、手ぬぐいで汗をふきつつ、なんとか登りきった。

10:00 尻高山到着。

20120805tugami3-014.jpg

立っているだけでクラクラしそうな暑さの中、
火照ったカラダをもてあましつつ、風がないので、
ノロノロと歩き出す。

二本松峠。
ここは少し風があったので、ザックをおろしてカラダの熱を逃がす。
5分ほど休んで、またカメ歩き。

20120805tugami3-015.jpg

最後のピーク?
入道山。

20120805tugami3-016.jpg

・・・と思ったら、地図上に小さなピークがまだあり、
その登りで最後の力をふりしぼる。
(汗はもう振り絞りきった・・・)

・・・と、

いままで、木立の向こうには緑しか見えなかったのだが、
下を向いているのに、樹木の向こうが青い。

20120805tugami3-017.jpg

海だ!

心の中で何かがはじけ、なぜか頭の中にメロディーが流れ始める。

 “恋心なぜに切なく、胸の奥に迫る

  ・・・・・

  遠く、遠く、離れゆくエボシライン・・・♪ ”

メロディと歌詞が鮮明に鳴り響く。

 “熱く熱くこみあげる涙に・・・”

まっすぐに日本海へと下っていく縦走路を
駆けるように下り始める。

もう止まらない。

額から滴り落ちる汗なのか、目の中から湧き上がる水なのか
トレイルがぼやけて見える。

心の奥底からなにかがこみ上げてくる感覚。
希望の轍がアタマの中で鳴り響く。

このまま海岸に出れば、それこそひとつのドラマなのだが。。。

 “遠く、遠く、離れゆくエボシライン・・・♪

  舞い上がる蜃気楼〜 ”

そこで映画のフィナーレのように、目の前の幕がおり、
視界は暗転。

ふたたびザックとともに、登山道の脇に倒れこむ。
ペースをあげすぎて、熱中症再発。

一気にカラダ中にショックが走り、
手が震えて、ウエストポーチをあけることもできない。

ひっくり返ったカメのようにギラギラと太陽の照りつける
縦走路で動くこともままならず、じっとショックが去るのを待つ。

5分ほどたっただろうか、ようやく手を動かせるようになり
最後の水をプラティから飲んで、息を吹き返す。

海の見えた感激に、調子に乗ってペースをあげすぎたのだ。

アホかオレは。。。。


20分ほどぶっ倒れて、ようやく起き上がる。

あと、海まで数百メートル。

這ってでも行くのだ。


この1月から、新しい部門を立ち上げ、
誰もチャレンジしたことのない仕事。

が、志とは裏腹に、成果の出せない日々、
ふたりも負傷者を出し、メンバーを鼓舞しつつも、心にのしかかるものは重く、
なんども、できないのではないかと挫けそうになる日々。

しかし、自ら立ち上げた仕事なのだ。
ガスに巻かれようと、吹雪に遭おうと、突破するしかないのだ。

何度倒れても、起き上がるしか道はないのだ。


  “夢を乗せて走る車道
       明日への旅 〜♪ ”

ストックにすがるようにカラダを起こし、
一歩一歩、確かめるように歩き出す。


やがて国道の車の音と、
夢か幻か、海の音が・・

12:50 栂海新道登山口到着。

20120805tugami3-018.jpg

国道を横切り、遊歩道を下っていくと、
そこに海があった。

20120805tugami3-020.jpg

新潟地方の最高気温予報37℃。

憧れの栂海新道の旅は、酷暑との闘い。
主題は、やり通すこと。

20120805tugami3-021.jpg

心に深く刻まれる山旅が終った。

(完)









posted by げんさん at 12:00 | 東京 ☀ | Comment(14) | TrackBack(0) | 北アルプス 夏山 秋山 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
お!更新されたばかりですね♪
1番乗り〜♪

快晴で素晴らしい!と思いきや、大変な思いをされた縦走だったのですね。
お疲れ様です。
最後の海の写真が登場したときは、思わず拍手しましたよ♪感動しました。
Posted by こまち at 2012年08月22日 12:51
げんさん、本当にお疲れ様でしたー!

長年の夢が叶いましたねー!
今回のレポ、嫌だ…感激しちゃって涙が出てしまいましたよー(T_T)
ホントに良かったですね!(ご無事で…笑)

暑さとの戦い、熱中症のふらふら…
きっとすごーく疲れ切ってるげんさんの瞳に映った空の青さと海の青さ…
いやーこれは感激しちゃいますね…まだうるうるしちゃいますよ@仕事ちう

去年の雨でも撤退から一年…こうやってゴール出来たこと、自分のことのように嬉しいです。
うん、素晴らしい山旅でしたね。
ここを歩いた者にしか分からない感激があるんでしょうねー!
羨ましー&やっぱりヘタレな私には無理かな
Posted by 矢車草 at 2012年08月22日 16:04
こんにちは。はじめてコメントします。

山行記、堪能しました。
栂海は「物語」のある山旅になりますね。すばらしい。
来年の夏に歩く予定ですんで、大いに参考になりました。

それにしても熱中症、おっかないですねえ。
ワタシも一昨年の夏、南ア山行の初日にヤラレました。
初体験だったので、もう、アセりましたね。
ワタシは脚が吊りまくるという症状でしたが、こんなときソロだと心細いもんです。

次の記事を楽しみにしています。

Posted by ラード at 2012年08月23日 11:19
ドキドキしながら読みました。
ビックリしましたよ、げんさんが?熱中症??
よくぞご無事で^_^;
私が同じ状況にもしなったら、新聞沙汰だっただろうなと思うと怖いですね。
あの週も、ほんとに暑かったですもんね。
(あれ?でもここって一日で歩くところ?ですか?
普通は途中で一泊???)

なにはともあれ、長年の夢、おめでとうございます。
水平線以上は何もない、真っ青な海がむかえてくれるってホント、ロマンですね。
きっとげんさんの仕事もうまく行きますよ、きっときっと。

ところで・・・もちろんこの後、日本海にじゃぶーーーん、したんですよね?(*^_^*)

Posted by cyu2 at 2012年08月23日 20:44
>こまちさん
コメントありがとうございます!
お返事遅くなってすいません。

申し分のない晴天だったのですが、
いかんせん気温は激しく上がり、
ひさびさに雪山とは違った真剣勝負な縦走でした。

最後は息もたえだえで・・写真もロクにない山行でしたが
読んでいただいてありがとうございます!
Posted by げんさん at 2012年08月25日 00:02
>矢車草さん
コメントありがとうございます!

今になって思えば、去年の無念さと悔しさが
バネになってやり通せたこともあったと思います。

栂海新道、歩いた人は二度とこない・・・というのは
わかる気がします(笑)

海をみたときはホントに目から鼻水がでそうになりました・・・
Posted by げんさん at 2012年08月25日 00:06
>ラードさん
はじめまして。
コメントありがとうございます!

ラードさんも熱中症・・・
いままで他人事でしたが、その後東京でも
あまりの暑さにひっくり返りそうになります。。。

いや、栂海新道の暑さ辛さをナメてました。。。
Posted by げんさん at 2012年08月25日 00:09
>cyu2さん
コメントありがとうございます!

励ましのお言葉、心にしみます。。。

あんだけ真夏の高尾山でボッカ訓練していたので
暑さも・・・と思ったのですが、どうしてなかなか。。。

最後は海に飛び込む気力もなく、
階段のてすりにつかまりそうになりながら
戻りました。。。
Posted by げんさん at 2012年08月25日 00:16
悲願達成おめでとうございます!
ご無事でよかったです(^∀^)
熱中症ってこわいんですね。。。

海が見えた瞬間のうれしさが伝わってきました。
ワタシもあの海へ下りて飛び込むのが夢なんですけど
パンツ一枚になれないので
オトコの人がうらやましいんですよ。
ワタシの場合は白鳥小屋に泊まりますけど、とりあえず。。。
Posted by くっきー at 2012年08月26日 09:19
>くっきーさん
コメントありがとうございます!

今回は面目ないことで、」こんなゴールになってしまいましたが
海が見えてからあんなに遠いなんて、想像だにしていませんでした・・・

白鳥小屋、中を拝見しましたが
とってもきれいでいい無人小屋でした〜

Posted by げんさん at 2012年08月27日 04:37
コメント出遅れてすみません。
携帯から拝見してたんですけど、パソコンから見たいと思ってたら、ずいぶん時間が経ってしまいました(汗)
げんさん、これまでに数々の素敵な山旅をされてきましたけど、今回は特に、心に深くきざまれる旅でしたねー
無事に親不知まで到達できて、本当によかった。
おめでとうございます!
がんばった分だけ、喜びもひとしおですね。
熱中症、おそろしいですね。
慎重なげんさんでもハプニングに見舞われるとは、やはりツガミ新道は手ごわい山道なのでしょうねー
本当におつかれさまでした。
Posted by まゆ太 at 2012年08月30日 07:07
>まゆ太さん
コメントありがとうございます!

久々に歯ごたえのある山歩きというか、
冬の単独ラッセルとはちがう厳しさを身に染みました。。。

熱中症、こんな風になるとは・・・でした
後遺症なのか、この夏の後半気温の高いところでは
フラッとなることが多かったです。
(あっ、これは低山病かも・・笑)
Posted by げんさん at 2012年08月31日 04:53
こんにちは
栂海新道。
行きたい行きたいと思いながら何年たったでしょう。
げんさんのレポを拝見して、
これはすでに私の範疇じゃない!やっぱりもう諦めなくちゃね、
って思っちゃいました。
山深い中から海に向かって歩くって、夢だったんだけどな♪
なにはともあれ、山好きには見逃せないルートを
みごとに「やり通すこと」ができたげんさんに
(オールフリーで(^_-))乾杯!

Posted by pallet at 2012年09月03日 16:37
>palletさん
コメントありがとうございます!

今回はちょと以上なくらいの暑さでしたから、
面目もない次第となりましたが
秋のシーズンならもっとラクに歩けるかと思います。

でも、海が見えた時はほんとうに感動しました。。。

Posted by げんさん at 2012年09月05日 04:45
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
アウトドア人気blogランキングへ banner_020.gif